海外ではもちろんだが、日本でも夜行列車というものに乗ったことがなかった。コルカタ行きの発車時間前に駅に着いて待つ。時間になっても来ないから焦り出す。待つこと数時間、ようやく電車が来た。日本の電車しか知らない僕はかなり待ちくたびれ、乗れなかったらどうしようと心配で疲弊したが、周りのインド人はたいして気にしない。電車に乗り込み指定の席へ。席は、向かい合うタイプの物で、夜はそれをベッドにする。電車のトイレはトイレの穴から走っている線路が見える。そう、垂れ流しだ。車窓から流れる景色は、日本にはない田舎の風景を映してくれる。電車の速度は遅いが、急ぐ旅ではない僕たちにはぴったりの乗り物だった。
電車は駅に停まるたびに、結構長い時間停車する。そして、そのタイミングで身体障がい者たちが列をなし、車内の通路を行進しながら乗客にお金を求めてくる。異様な光景だった。身なりもボロボロで手がない人、顔が変形してる人、足が不自由な人、足がない人が這いつくばりながら、大きな目でこちらを見上げ、お金の要求をする。これが各駅で行われていたと思う。S君と顔を見合わせた。後日聞いた話では、カースト制度の影響もあるらしいが、貧しくて働けない人たちは自分で切断して障がい者になる人もいるらしい。いろいろ考えさせられる出来事だった。
夜の電車。社内は暗くなり、僕たち以外の観光客は居ない状況で、不安はあったが日中の疲れからか、しっかり眠りに落ちた。朝、目覚めて、車窓から流れる海外の景色に、僕たちはまだインドにいるんだと実感して笑みがこぼれる。そして異変に気付く。昨夜、万が一のためにとポケットに入れていた携帯がないのだ。身の回り、椅子の下、いろんなところを探すが見つからない。近くのインド人に片言で伝えたところ、早朝、女の子がポケットをあさっていたとのこと。やられた。警戒が甘かった自分に反省しかなかった。
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