派遣前訓練in二本松⑧ご挨拶①

日記

 訓練も終盤となり、この日は現天皇陛下、当時の皇太子の徳仁様に派遣前の挨拶に行くため、一同、東宮御所へ向かった。ちなみにこれもJICAプログラムの一環である。流石にこの日は、慣れないスーツを着た。というか選択肢はなかった。予定より早めに到着し、1時間ほどフリータイムがあったので、みんな各々の時間を過ごす。

 僕は同じ英語クラスの勝さんに誘われ、その辺をぶらぶらすることに。他愛もない話をしながら、歩いていると、勝さんが床屋を見つける。勝さんはごく自然に「髪切ってこようかな。一緒にどう」とのこと。確かに訓練始まって約2か月、髪を切ってないから、お互いに伸びてはいたが、僕はこのタイミングではいいやという感じ。それを伝えると「そっか、じゃあちょっと髪切るまで待っててもらってもいい?」と切る気満々。一緒に床屋へ入店し、勝さんが髪を切るまで雑誌を読みながら待っていた。

 30分後、髪を切った勝さんを見て、開いた口が塞がらなかった。勝さんは、バッチバチにポマードを塗りたくり、七三分けに。そして、至って普通の表情。本人曰く「皇太子さまに挨拶に行くから」とのこと。当時は、若者で七三にする人はほぼ皆無で、おまけに今日は、みんなスーツを着ている。勝さんの身なりは、胡散臭い政治家そのもの。笑いが込み上げてくる。僕は、この人はぶっ飛んでるなと感心してしまった。

2人で集合場所に戻ると、みんなが勝さんを見て二度見、開いた口が塞がらない状態。一気に人だかりができ、人気者となった。みんなニヤニヤしている。もともと、訓練所で目立っていた人達も、勝さんを見て激しく一本を取られたため、「やられたー」と頭を抱える。そして、一同、東宮御所へ向かった。

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